京大、ALS患者の病気の進行停止 iPS創薬で成果 (日本経済新聞 2021/10/01)

京大、ALS患者の病気の進行停止 iPS創薬で成果 (日本経済新聞 2021/10/01)

【記事概要】

  • 京都大学iPS細胞研究所の井上治久教授らは9月30日、iPS細胞を使った創薬研究で見つけた治療薬候補をALS患者に投与する臨床試験で、進行を止める効果が一部の患者で出たと発表した。
  • 投薬で病気の進行を止める効果は世界初であり、根本的な治療法をめざし、より大規模な治験をして詳しく調べる。
  • 患者のiPS細胞から病気の細胞を再現し、様々な薬剤を試して慢性骨髄性白血病の治療薬「ボスチニブ」をALSの治療薬候補とした。
  • 2019年、20歳以上80歳未満の比較的軽症の9人にボスチニブを投与し、安全性などを調べる初期の医師主導治験を始めた。
  • 投与期間中と終了後に、会話や食事、歩行などをもとにALSの重症度を評価する方法で調べると、9人中5人で病気の進行が3カ月止まった。
  • ただ今回の治験は対象の患者数が少なく、効果の検証に必要な偽薬を投与する患者群との比較がない。井上教授は「科学的に有効性を示すには、第2相以降の治験が必要だ」と話す。
  • iPS細胞を使う創薬研究では、慶応義塾大学が5月、パーキンソン病の治療薬を投与する治験でALSの進行を約7カ月遅らせる効果を確認したと発表している。様々な治療薬候補の治験が進めば、ALSの根治法が見つかる可能性が高まると期待を集める。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)
運動神経の障害で筋肉が徐々に衰える進行性の難病で、国内に約9千人の患者がいる。個人差があるものの、発症から数年で人工呼吸器を装着したり亡くなったりする。